妖魔03(R)〜星霜〜
「名を何と言う?」
「答える義務はない」
「すまない。私としたことが礼儀がなっていなかった。風間だ。名は棄てた」
この世界で礼儀など、あってないようなものだ。
だが、私は目の前の少年の礼儀に答える。
「赤城学」
好印象というわけではないが、礼儀作法は嫌いではなかった。
風間から左手で握手を求めてくる。
「よろしく頼む」
「ああ」
左手を掴もうとした瞬間、右拳が弧を描いてわき腹を狙う。
私は、礼儀作法を心得ている風間であれ信用していなかった。
そう、性格の解りにくさが際立った方がどす黒いのだ。
広目のビルに来るまでにウォーミングアップは終わらせてある故に、危機に本能が作動し、自然と真後ろにバックステップを行っていた。
「急な攻撃にも対応出来るか」
「これも礼儀か?」
「私なりの礼儀だ。だが、神が与えた試練ともいえよう」
「神だと?」
空想を抱く癖があるのか?
神など、どこにも居はしない。
「私は信じている。生を与えていただいたのも神がいたからこそだ」
「私にはどうでも、ぐ!」
避けたはずだったのだが、わき腹付近に痛みが走る。
あまりの痛みに膝をついてしまう。
「神は世界に必要な者にこそ力を与える。それは何故か、世界を変えるためだ」
気が遠くなるほどの痛み、骨に異常を来たしたのか。
「お前と私は人間だ。そこに差はない。だが、世界の変革を行う精神を持っている差は歴然としている」
拳の開閉を何度か行い、私を上から見下ろす。
「お前は避けたと思っていたようだが、少しでも触れれば当たりだと判定する拳を私は得ている。それは足も同様」
慣れていない痛みに、意識が遠のく。
最後に見たのは、安らかな寝顔を浮かべるマヤの顔だった。
「答える義務はない」
「すまない。私としたことが礼儀がなっていなかった。風間だ。名は棄てた」
この世界で礼儀など、あってないようなものだ。
だが、私は目の前の少年の礼儀に答える。
「赤城学」
好印象というわけではないが、礼儀作法は嫌いではなかった。
風間から左手で握手を求めてくる。
「よろしく頼む」
「ああ」
左手を掴もうとした瞬間、右拳が弧を描いてわき腹を狙う。
私は、礼儀作法を心得ている風間であれ信用していなかった。
そう、性格の解りにくさが際立った方がどす黒いのだ。
広目のビルに来るまでにウォーミングアップは終わらせてある故に、危機に本能が作動し、自然と真後ろにバックステップを行っていた。
「急な攻撃にも対応出来るか」
「これも礼儀か?」
「私なりの礼儀だ。だが、神が与えた試練ともいえよう」
「神だと?」
空想を抱く癖があるのか?
神など、どこにも居はしない。
「私は信じている。生を与えていただいたのも神がいたからこそだ」
「私にはどうでも、ぐ!」
避けたはずだったのだが、わき腹付近に痛みが走る。
あまりの痛みに膝をついてしまう。
「神は世界に必要な者にこそ力を与える。それは何故か、世界を変えるためだ」
気が遠くなるほどの痛み、骨に異常を来たしたのか。
「お前と私は人間だ。そこに差はない。だが、世界の変革を行う精神を持っている差は歴然としている」
拳の開閉を何度か行い、私を上から見下ろす。
「お前は避けたと思っていたようだが、少しでも触れれば当たりだと判定する拳を私は得ている。それは足も同様」
慣れていない痛みに、意識が遠のく。
最後に見たのは、安らかな寝顔を浮かべるマヤの顔だった。