妖魔03(R)〜星霜〜
「どうでもいいが、お前さんに渡さなくちゃならない物があった」

ポケットの中から取り出したのはコアだ。

「郁乃からの贈り物だ。マザコンのお前には嬉しい一品だろう」

軽く投げてきたコアを受け取る。

「母さんが?何でテメエが持ってやがる?」

「言ったろ?縁の下の力持ちは表に出ないってな。それと、話すとお父さんの不思議な部分を曝け出してしまうじゃないか。それじゃ面白くない」

こいつにお父さんと何度も言うのも癪だ。

それに、言ったところで話す気はないらしい。

「あんまり男とのお喋りで二酸化炭素を吐かせるなよ」

お吟さんとのキスをしながら、嫌な気分を拭い去ろうとしているのか。

何にしても気分が悪い。

「俺だってゴメンだ」

そろそろ、体の自由も戻ってきた。

本当に母さんからの贈り物なのかはわからない。

だが、これからの闘いの中で必要な物ならば、野郎から受け取った物だとしても手に入れておく。

プライドだとか関係ない。

寿命まで死なずに、日本に帰らなくちゃならないんだ。

立ち上がり、家を出ようとしたときだった。

「丞」

「ん?」

後ろにはお吟さんが立っており、手にはコートがあった。

野郎とのキスを中断して、こちらに来てくれたのか。

「お前に簡単に死なれると困るアル」

「何でだよ?」

「お前は中々良いイチモツを持ってるアル」

「はは、下かよ」

「まあ、他の部分のお前は心身共に包茎アルが、次に出会うまでに一皮向けるアル」

そう言いながら、俺にコートを手渡した。

「おいおい、俺のコートじゃないか」

野郎は嫌そうな声を上げる。

「アチシとのセックスでギブアンドテイクアル」

「ま、お古だからいいが、汚したらクリーニング代を請求するぞ」

全然良くないだろうが。
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