妖魔03(R)〜星霜〜
例えどんな理由であれ、お吟さんの好意を無駄にするわけには行かない。

「ありがとう」

耐久性に優れたコートを羽織る。

最後に、一つだけ聞いておきたいことがあった。

「お吟さんは、美咲のことどう思ってたんだ?」

「ちょっと馬鹿な可愛い孫アル」

「そうか」

美咲に対して他人とは思っていなかったらしい。

それを聞いて安心した。

「本当に世話になったよ」

「そう思うのなら、息子の耐久度を上げてアチシの元に来いアル」

「難しいと思うけどな。じゃあ、行くよ」

俺は背中を向けて、野郎とお吟さんとの行為を見ることなく家を出た。

空は晴れている。

風も吹いている。

絶好とは言わないが、旅立つには良い気候だといっていい。

「さて」

行き道は二つ。

テンプルナイツが住み着いた街か、妖魔が住む村。

レベル1の俺からすれば、魔王の住む古城に挑もうとする勇気などない。

そこらへんで一角ウサギを狩るくらいが丁度良いのだ。

でも、一角ウサギも大きな牙を持っている事には変わりない。

妖魔の村には話せば解ってくれる奴がいる。

言っちゃ悪いが、レインは信用ならない。

妖魔の村にいる奴らもほぼ知らないので、能力の的にされかねない。

ウッドも攻撃してこないと限らないが、話をしなければ前に進めない。

「決まったな」

妖魔の村で情報を掴んでから、その後の行動を決めるとしよう。

それにはまず、洞窟の湖でウッドと出会うしかない。
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