妖魔03(R)〜星霜〜
洞窟の中。

薄暗いが、青光りする湖は健在である。

このまま泳いで向こう岸まで行く途中で、誰かに見つかったら大変である。

だからこそ、ここで待って誰かに会わなければならない。

今度は怪しい事をしていないから、いきなり攻撃はしてこないだろう。

いや、見知らぬ者だから、最初から怪しいと断定されて攻撃されかねないか?

「だがなあ」

そうだ、身を隠してウッドを待てばいいんじゃないのだろうか?

でも、身を隠せる場所がないんだよな。

通路にいると、誰が来たかなんてわからないしな。

「んー」

俺が悩み続けていると、向こうの通路側から何者かが出てくる。

俺とそいつとの目があってしまった。

「お前、何してる!」

「ま、待て待て!今日は水を汲もうなんてはっちゃけた事はしてない!だから、攻撃するな!」

何者かの正体はウッドだった。

だが、アクティブな姿勢を解く気配がない。

「俺は、あんたに話があって来たんだ!」

「俺に用、ない!」

このままじゃ、闘いの二の舞になってしまいそうだ。

「俺はこの島から出たいんだ!それは、あんたにしか頼めないんだよ!」

「わざわざ、厄介事、作る気はない」

どうにも、話が通じる気配がない。

でも、ここで諦めたら、次があるかどうかわからない。

「お願いだ!どうにかして大切な奴に会わなくちゃならないんだ!約束があるんだよ!」

「お前、一度、この水を汲んでいった者!信用出来ない!」

「あの時の事は本当に済まないと思っている!」

プライドなどクソ食らえだ。

俺は正座をして、頭を地面に擦り付ける。

「死んだ奴との約束だけど、絶対に果たしたいんだ!じゃないと、俺は、死んでも死にきれねえんだ!」

美咲、俺は絶対にお前のお願いを遂行してみせる。
< 8 / 355 >

この作品をシェア

pagetop