妖魔03(R)〜星霜〜
ウッドの家は他の家と同じ造りであり、特に変わった部分はない。

しかし、家の周りには花壇が存在しており、色とりどりの花が並んでいる。

「ウッドがやったのかねえ」

顔に似合わず、可愛らしい趣味を持っているものだ。

入り口に回ろうとすると、地面に赤い毛糸の玉が落ちていた。

「何だ?」

拾い上げてみると、細い糸が毛玉から伸びている。

先のほうを見ると、ウッドの家から出ているようだ。

俺に対する誘いなのだろうか。

村だけあって突然襲い掛かってくる罠はないだろうが、入り口以外のところに近づくと危険である。

いつウッドに見つかって、窒息させられるかわかったものじゃない。

でも、毛玉をなくして困っている妖魔がいるとすれば、届けてやってもいいんじゃないだろうか。

ちゃんと理由を話せばウッドも解ってくれるはずだ。

決心して糸を辿っていく。

その先には、家の窓が存在している。

そこから、編み物を手に持っている髪の長い女の子が見える。

民族衣装を着用しており、窓際に設置されたベッドらしき寝床で背を起こしているようだ。

毛玉を持っている俺に気付いた。

「誰?」

目の色はブルー、髪の色は黒に近い紫。

落ち着いた雰囲気で問いかけてきた。

「怪しい者じゃないさ。それより、毛玉、君のだろ」

「はい」

女の子が警戒している様子はないが、元気のない顔をしている。

「ほれ」

女の子に毛玉を渡す。

「ありがとう」

「どういたしまして」

長居すれば、危険度は二倍に飛躍する事だろう。

「あなたは、兄の友達?」

一人でいた事が寂しかったのか、誰かと話したいのだろうか。
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