妖魔03(R)〜星霜〜
「お前な、チェリーに嫌われたいのかよ?」

動けるようになったのだが、顔を上げて睨むだけであった。

「俺はな、チェリーとお前が仲良くするのは良い事だと思ってるのさ。チェリーはモンドの事はどっちかっていうと好きな部類に入るんだろ?」

「うーん、そうかなあ」

返事的にはまどろっこしさを感じるが、好きなんだろう。

「モンドが嫉妬するのは勝手だが、好きな奴が嫌いになるような嫉妬は一番みっともねえぜ」

モンドは、不機嫌そうな顔を崩さなかった。

何で子供たちに、恋愛事情を話ししなくちゃならないんだろう。

自分自身がみっともないところを女に見せまくっているので、人の事はあまり言えないんだけどな。

しかし、飯を貰うだけで、どれだけ苦労しなくちゃならないんだよ。

「ふう、さてさて、オニギリ君を頂こうか」

手に取ろうとしたオニギリは地面に落ちているようだ。

先ほどの出来事で驚いたチェリーが落としてしまったんだろう。

「く、オニギリ君がああああああ!」

怒るにも腹が減って、最大限の怒りが出せなかった。

「お、お兄ちゃん、ごめんね。私が落としたから、ごめんね」

チェリーは巻き添えをくらっただけなのに、泣きそうな面になっていた。

オニギリを落とした原因を作ったのはモンドだ。

それに続いて暴れたから、責任は俺にもある。

「なあに、ふりかけがかかったとでも思えばいいさ」

落ちたオニギリにかかりすぎたふりかけを少し払うと、口の中に放り込んだ。

硬い砂利が柔らかい米とのロンドを舞いはじめる。

砂利が入った事により、不味さのスパイスが加わるとは思わなかった。

「お兄ちゃん、駄目だよ。おいしくないよ」

「カメリアが作った物がマズイわけがないさ、な、モンド?」

モンドは答えようとはしない。

「お前はこんなに美味いおにぎりをまずいと思ったのか?」

襟首を持ち上げて、多少強引に同意させようとする。

「気安く触るな」

振り払おうとしたが、強く握っているせいで離れない。

「美味いよな?」

俺はモンドが同意するまで離そうとはしない。
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