キラキラ
「すごいねぇ」
グラウンドを見ていた祐夏が振り返って言った。
「あれは野球部だよね。で、あれがサッカー部でしょ。あれは陸上部、あっちのコートはテニス部だね。」
順番に指をさしながら、確認するように言う。
「入りたい部活あるの?」
私が聞くと、彼女はにっこり笑って、
「うん。野球部のマネージャー。」
と、答えた。
ものすごくあう、とすぐに思った。
彼女の優しい雰囲気は、まさしくマネージャーだ。
「雪音は?」
ない。というより、あまり興味がわかないのだ。
春の、このふわふわした喪失感のようなものが、私の中に住み込んでしまったような感じがする。
「まだわかんないなぁ。」
とりあえずそう答えた私に、そっか、と返事をしたきり何も聞かなかった。
彼女は、深く立ち入らない。そこが、直樹くんの距離と似ていた。
彼女を好きだと思えるのは、そういうところに救われるからなのかもしれない。
「休憩みたいだよ?入部届、出して来たら?」
彼女がそれを持っていたのは知っていたので、声をかける。
「うん、じゃあ行ってくる。」
にっこり笑って走り出した彼女を、眩しい思いで見送った。