キラキラ
ざわざわとした教室。
音楽室は、変なにおいがする、といつも思う。
3階の端にあるここは、風通しがいいので、変なにおいは初めにしか感じないのだけれど。
「じゃあ今日は、一人ずつ歌ってもらいます。」
と、音楽の先生――目がやたら大きい男の先生――がいうと、たちまち教室には非難の声が飛ぶ。
入学早々、独唱テストなんて、この人の脳はピアノの弾きすぎでどうにかなってるんじゃないか、と私も思っていた。
「次、坂下」
と、祐夏が呼ばれる。
やだなぁ、もう、とつぶやいて前に立ち、可愛らしい声で歌う。
色の白い彼女は、頬をかすかに赤く染めている。
「次、田辺」
私が呼ばれた。
頑張れ、と小声で言う祐夏にありがと、と告げ、前に立つ。
ピアノの伴奏が流れ、それに合わせて歌い出す。
途端に、教室が静まり返った。
何なんだ、と思いながらも、最後の高音の部分を歌い上げる。
「すげぇ」
歌い終わった時、そうつぶやく声が聞こえ、それが合図になったようにまたざわめき始めた。
「雪音、すごい!歌、すっごく上手いね!」
興奮したように祐夏が言う。
不思議な感覚で、ありがと、とだけ告げ、席に着いた。