キラキラ
「田辺」



帰ろうと席を立ったところに、誰かが話しかけてきた。



「え~と…」


祐夏以外の名前はどうも覚えられない。



「葛木。葛木敬太。」



察したのか、自分から名前を告げ、



「今日ちょっと時間ある?」



怪訝な顔付きの私を見て、ちょっと会ってもらいたい奴がいんだけど、と涼しげな顔で言う。



「私に?」



「そ。」



ちょっとだから、と顎で外を示し、先に立って教室を出る。




やだなぁ、と思いながらも、断りきれずにとりあえずついて行った。




校門まで行くと、葛木敬太が片手を上げ、そこにいたブレザーを着ている誰かと話し出した。



うちの高校は学ランなので、他高生なのだろうということはわかったものの、他のことは何もわからなかった。



ブレザーの彼が、私に目を向ける。
物怖じしない、直球のような視線に、少し動揺して目をそらしそうになったが、何か悔しいのでじっと見つめてやった。



「こいつがそうなのか?」


急にこいつと呼ばれたことに少しかちんときた。



「そう。田辺…雪音だっけ。」



葛木くんが私を見て言う。


私が答えずにいると、ブレザーの彼が、



「そんなにすごいの?こいつの声。」



と、葛木くんに聞いた。



「あぁ、間違いないよ。」


「じゃあ」

ブレザーが私をまっすぐに見て言う。




「聞かせてよ、歌。聞かないとわかんねぇしさ。」




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