キラキラ

何のことだかさっぱりわからないが、このブレザーの男のこの視線と、高慢ちきな話し方にいらいらしていた私は、腹立ち紛れにその場で思い切り歌ってやった。




下校中の生徒が驚いたように振り返る。



彼の目を見据えたまま歌いきると、彼は目を一瞬丸くし、すぐに戻すと、にやりと笑った。
葛木くんは驚いたように私を見ている。




「なるほど。嘘じゃねぇな。なぁ、お前…」


「田辺雪音」



彼の言葉を遮り、名前を言ってやる。



「俺は、中沢武弘。なぁ、雪音。俺たちと、音楽やらないか?」



にやりと笑って言った彼――中沢武弘――は、私を真っ直ぐに見る。



「音楽…?」



少しだけ頷き、私を見つめる。まるで、YESと言わないはずがない、というような態度で。




制服の上から、小さな星を握りしめる。

私がいる、ということ。

私を見つけてくれる人が、いるかもしれない、ということ。



武弘は、まだ真っ直ぐに私を見ている。




――飛び込め。



よくわからないけれど、そんな声が聞こえた。
いや、そう思った。




私は、真っ直ぐな視線をもう一度捉え直し、




「いいよ」




と、言った。




武弘は、一瞬目を綻ばせ、そしてまた、にやりと笑う。葛木くんは、ほっとしたように笑った。



< 15 / 45 >

この作品をシェア

pagetop