キラキラ
「素敵なことだと思わない?何の道具も使わずに、自分のもってるものだけで、あんなに綺麗なものが手に入るなんて。」
そう言って、目を閉じて、ほっと白い息をはく。
そんな彼女の頬に、
星のように光る涙。
「そうだね。」
そう答えた僕を見て、彼女は溢れる涙を拭わずに、また歩き出した。
彼女とは、小学校で知り合った。
その頃の彼女は、活発で明るく、よく笑う女の子で、僕はいつも彼女のマイペースな誘いに振り回されていた。
僕はどちらかというとおとなしい感じの、地味なタイプだったので、ひまわりのような明るさの彼女に憧れのようなものを持っていて、振り回されるのを楽しんでさえいた。
しかし、中学校に入ると、彼女は一人でいることが多くなった。
明るく活発なところが、中学校という世界ではマイナスの要素で目立ってしまった。
さらに彼女は、少し障害のある子が傘で突っつき回されているところに物怖じせず割って入って止めたり、クラスの子が不良グループに呼び出されたと知ると助けに行ったり、正義感から行うことがすべて裏目になり、自分が標的になってしまうことがよくあった。
人との距離の取り方や、
その世界に馴染む方法は、
必ずしもすべて正しいとは言えない。
彼女はそれが極端に苦手だった。
そうして彼女は、ひまわりのような笑顔を見せなくなってしまった。
学校で見かける限り、彼女は笑わないだけでなく、泣くこともなかった。
感情をどこかに置いてきたような、スイッチの切れたおもちゃのような、そんなふうに存在していた。
僕が通う塾に、彼女が入ってきたのは中1の終わり頃だ。
同じ方向に帰るのは、僕の他に男子が3人、そして彼女。
最初はだいぶ距離をあけて、後ろからついてくるような感じで帰っていたが、
そのうち僕が他の3人と別れ、1人になると、彼女は少し早足で、僕との距離を狭めた。
それに気付いた僕は、
何故なのかわからないけれど、
立ち止まって、彼女が追い付くのを待つようになり、
一緒に帰るようになった。