キラキラ

武弘がスタジオの扉を開けると、雪音が壁にもたれながらイヤフォンで何かを聴いていた。
と思ったが、目を閉じていて、少しあいた唇からは規則正しい呼吸の音がする。


入ってきた俺には気付いていないようだ。



リボンを外した喉元に、小さな星が光っている。


いつもは挑むような強い視線で、力強い声を出す。
ただ、ギリギリのところに立っているような、そんな危うさもある。



白いカッターシャツを脱ぎ、そばにあったイスに放り、しばらく雪音を眺める。



と、雪音が何か声を漏らした。
それはこいつの歌声からは程遠い、消えてしまいそうな声だった。



起きたのかと思い、顔を覗きこんでみると、唐突に彼女の目から涙が流れた。




ドキッとして思わず顔を離す。



涙に驚いたわけじゃない。ただ、涙を流す雪音の顔はとても儚くて、そしてとても綺麗だった。




「雪音」



声をかけて起こそうとすると、雪音は甘い吐息を吐き、



「ナオキ…」




とつぶやくと、また涙を流した。




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