キラキラ
「ほら、入りなよ。」
雨の中で突っ立っていた私に、誰かが傘を差し出す。
「これじゃあ今日は、星が見えないね。」
ずぶ濡れの私が、雨を見ながら言う。
「大丈夫。そこにあるよ。」
そう答えた傘をさす人。
それは、
「直樹…」
待って、と言おうとしたのに、持っていた傘を私に渡してそのまま去っていく。
待って、行かないで…
唇に不思議な感触を感じて目をあけると、
すぐ近くに
武弘の顔があった。
怒ったような、切ないような表情で。
夢か、と思った途端、今の不思議な感触が、この人の唇によってもたらされたのだとわかった。
武弘が、がっちりとした手で後頭部と腰を押さえているので身動きができない。
何度も繰り返される口づけの合間に、どちらともつかない吐息の音。
どのくらい時間がたっただろう。
やっと私を解放した武弘は、少し離れたところにあるイス――白いカッターシャツがかけられた――に座り、真っ直ぐに私を見る。
「な、んで?」
掠れた声で、彼に問いかける。
「祐夏の彼氏なんでしょう?」
答えない武弘に、少し声を強める。
「お前のせいだよ。」
そう言った武弘にイライラして、睨み付ける。
「お前の声だけじゃない。欲しくなったんだよ、お前を全部。」
強い視線を向けられると、私の中で警報が鳴る。
ここにいたら、ダメだ。
私は、そのまま走ってスタジオを飛び出した。