キラキラ
今日は、練習が終わるのを待って一緒に帰ろう。
そう思ってスタジオに足を向けた。
あんな場面を見てしまうなんて知らずに。
雨の中を傘もささずにざくざく歩く。
「雪音」
壁に寄りかかって座る雪音に声をかけたかと思うと、何かつぶやいた雪音に、
武弘は、
キスをした。
何度も何度も、私にするような優しいキスじゃなく、男を感じずにはいられない乱暴なキス。
夢だと思いたかった。
でも、どうしたってこれは現実だ。
その場に貼り付いて離れなかった足を無理矢理動かして、その場から走り出した。
冬の、冷たい雨が私を突き刺すように降っている。
涙なんてこの雨に流されてしまえ。
「祐夏?」
後ろから呼び掛けられ、振り返ると、傘をさした敬太が驚いた顔で立っていた。
「葛木くん…」
泣き顔の私の顔を見るなり駆け寄ってきて、右手で傘をさしたまま、抱き寄せられる。
その温もりに、目を閉じた。