キラキラ

「そうだね。」


そう答えた彼は私を見て、すこし微笑むと、
また歩き出した。



彼といると、ほっとする。

ゆっくりしたテンポで隣を歩いている彼を見る。


この人のおおらかさは、
何なんだろう。
存在そのものが、大きなふわふわの布団みたいだ。



しんと静まり返ったいつもの帰り道。ゆっくりとしたテンポで刻む靴の音。言葉の途中にほっと吐き出す白い息の音。



彼とのこの時間があれば、生きていても大丈夫だと思う。
どんなに辛いことがあったって、ここはこんなに平和でいて満ち足りている。



彼はいつも、私の言葉に返事をくれる。
そこから聞こえるのは『肯定』だとしか思えないような、柔らかな声。



彼は、吸い込まれそうになるぐらい澄んだ目で、私を見る。
冬の夜空みたいだと、いつも思う。
昔から、冬が好きだった。冬の夜のこの感じ。冷たくて、静まり返っていて、吸い込まれそうな、この感じ。


冬の夜空の星は、よく見える。
彼の瞳のように、澄んでいるからだと思う。



小学校の時、一緒にジャングルジムに登り、星を見た――遅くなって親にすごく怒られた――ことがあった。
強引に誘う私に、その時も彼は柔らかな声で「いいよ。」と『肯定』を返した。

彼のくれる柔らかな『肯定』。
それは、まるで呼吸のような自然さで。


私を見つけてくれる。



それだけだ。
けれど、


どれだけ彼は、私を助けてくれただろう。


いつも私が追い付くまで待っていてくれる、
私の話に返事をくれる、
柔らかな声で『肯定』をくれる、


そんな彼との時間は、私のすべてだった。




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