キラキラ
雪音が、少しだけ微笑んだ。
強い視線で俺を見つめ返しすと、掠れた声で、
「あたり前でしょ」
と、言った。
彼女らしい、真っ直ぐな言葉だった。
ごめんな、と言おうとすると彼女は、
「謝らなくていいから。」
と、お見通しで俺に言う。
「武弘、ありがとう。」
ゆっくりと、彼女が話し始める。
その声は次第に、凛とした響きを取り戻していく。
「何もなかった日常に、音楽っていう楽しみをくれたのは、武弘だもの。嬉しかった。私を見つけてくれる人がいるなんて、思わなかった。感謝してる。武弘にも、敬太にも、祐夏にも。」
「雪音…」
「私を好きになってくれたこと、嬉しかった。人から求められたことなんて、初めてだった。でも、私は祐夏みたいに強い気持ちで、武弘を想うことはたぶんできない。武弘は、祐夏と一緒にいるべきだと思う。」
ありがとう、と言った雪音の唇を、指でなぞる。
「お前…優しいんだな。」
「ずるいだけよ。」
フッと笑って答える。
不意にまた抱き締めたくなって、目を閉じてそれを堪える。
「俺は、これからもずっと祐夏を守っていく。でも、もし来世、来々世でもいい、俺がもしまた雪音と出会ったら、覚悟しろよ。」
雪音が、ふふっと笑って、何を?と聞いてくる。
「きっと次は、俺に惚れさせてやる。」
「手強いよ、私。」
「もちろんさ。難しい問題ほど、やる気になるんだよ、俺は。」
雪音の頬を撫で、振り切るようにその場を後にする。
じゃあな、と片手を上げて。