キラキラ
着いたところは、
ジャングルジムのある、公園だった。
昔、一緒に星を見たジャングルジムだ。
「星が綺麗」
いつのまにか手はほどかれていて、ジャングルジムの上から彼女は僕に言った。
「うん。」
久しぶりの鉄棒の感触を、あいている左手に感じながらジャングルジムにのぼる。
「ありがとう」
しばらく星を見上げていた彼女が、ぽつりと言った。
「ありがとう」
涙をこらえたような声で、もう一度、彼女が言った。
「なにがありがとうなの?」
「見つけてくれて。」
「見つけた?」
「直樹くん」
初めて、
彼女が僕の名前を呼んだ。
「あなたが、私を見つけてくれた。受け入れてくれた。あなたがいたから、私は今もここにいる。自分の目で、星雲だって見られる。あなたは私を、たくさん助けてくれた。」
ついに溢れ出した涙を拭おうともせず、彼女は凛とした声で続ける。
「今日で、もうあなたとこんなふうに一緒にいられなくなる。それがとてもこわい。でも、」
空を見上げる。
「いい加減、自分で立たなくちゃ」
微笑んで、彼女は僕を見る。
「約束する。きっと私、あなたみたいに優しくなる。あなたがくれた優しさと同じだけ、優しくなる。きちんと一人で、立てるようになる。だから、お願い」
彼女が、僕の手を握った。
「忘れないでいて。」
それだけで、何があっても私は生きていける、と
澄んだ瞳で彼女は言った。
僕は、何を言ったら今の気持ちを伝えられるのかがわからなくて、
彼女の手を握りしめて、
彼女の冷たい唇に、乾いた唇をそっと重ねた。
少し、しょっぱかった。
「卒業。」
にっこり笑って彼女はすいすいとジャングルジムを降り、
「それ、あげる」
と、片方だけ手袋のつけられた手を振って、帰って行った。