キラキラ
「卒業生、退場」
今日は、卒業式だ。
あちこちですすり泣く声が聞こえる。
卒業証書をもらっても、
卒業アルバムをもらっても、何も思わなかった。
だって、私が卒業するのは、ここではないのだから。
冷たい唇の感触を思い出す。
私は、きちんと、彼から卒業したのだ。
校門の前でポーズを取っている、刺繍の入った学ランやらセーラー服を横目に、裏門から外に出る。
「ね、寄り道しよう」
風が吹いて、裏門から続く坂道の並木が、ざあっと音を立てる。
柔らかい声が聞こえる。
振り返らなくても、彼だとわかる。
目を閉じて、ゆっくり息を吸い込んでから、振り返る。
そこには、いつもの笑顔で私を待つ、彼がいた。
「いいよ…」
涙をこらえながら、
私を待つ彼の元に、ゆっくりと近付く。
彼は微笑みながら、左手を私に差し出した。
右手に、卒業証書の筒を持て余しながら。