キラキラ
「いいよ…」
泣いているような笑っているような、不思議な表情で彼女は言い、下っていた坂を引き返した。
僕が差し出した左手に、彼女は持っていた卒業証書を左手に持ちかえて、右手を乗せた。
そのまま、学校を一度も振り返らずに、僕たちは坂を下る。
どこに、と聞かないところが、彼女らしい。
彼女の手を引いて、僕はあの場所へと向かった。
「真っ青」
ジャングルジムの上で、空を見上げながら彼女が言った。
風が足元を吹き抜ける。
「でも、星は今でもそこにあるよ。」
僕は、彼女を見ながら言った。
彼女が僕に視線を戻す。
不思議な表情で。
「君が見ている星は、いつでもそこにある。君は真昼の星は見えないと思っているだろうけれど、僕はそれを見ることができる。僕が君を見つけたようにね。」
彼女がまっすぐに僕を見つめる。
「だから、僕から卒業した君を、きっと僕と同じように見つける人は、絶対にいる。心配いらない。」
「…いなかったら?」
震えるような声で言い、彼女はうつむく。
「僕は、必ず見つけるよ。いつでも、ずっと先の未来でも。君がいつか、一人で立っているなら、僕はそれを必ず見つける。約束だ。それまで、君は君の約束を守ってほしい。」
彼女の目から、涙があふれた。
「きっとたくさんの人が、君を見つけるよ。大切な人が、きっとできるよ。だから、最後に僕が、君という目印をあげるよ。」