女王様御用達。
『白い本だと?』

はっ。

神はバカにしたように笑った。


『ちょっと名の知れた魔法作成師が死後に残した何も書いていない本か。ただ、劣化や破損からその本の状態を守るだけのおもしろくない術か』


「さすが……よく知っているじゃないか。じゃあ理解しろ」


『?』


「白い本はあらゆる状態におかれても破損することはない。火にくべられようが、水に入れられようが、ページさえも破れない。物も書けない。術さえも解けないし、その製法は未だ謎に包まれている。これは本があるリュウズであらゆる魔法使いが研究したたことだ」


まあ、術が術だけにそこまで深くは研究されていない。

確かルールの館長室にあるやつだ。

その特殊な存在から、禁忌本扱いになっており、閲覧は女王許可のみだ。


「しかし、唯一その白い本を汚すことができた人間がいた。そしてその白い本は、汚れたままその状態を維持し劣化や破損から身を守っている。その一見無駄な術とも思える術は死んだ魔法作成師しか使えない……どういう事かわかるか?」



……術を使える人間はこの世にはいない。

術を解いてまた術をかけるなんて不可能。


「つまり、術は発動したままその本は汚されたんだ。そしてその本は何故か汚された状態と同化していると考えていい。そしてこれは推測だが」





シュシは嘲笑うように言った。
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