女王様御用達。
「その本を汚した人間も、汚したことで本と同化してしまったと考えられないか?」


『なんだと?』



「本がかけた一種の呪い。本人は自覚がないかもしれない。だけどその本があるかぎり、そいつには本と同一の守りが働く。もちろん白い本が人の手によりめくれるように、絶対的な防御ではない」


そう。

その白い本の発見は、ゴミを燃やしていた釜の中からだった。
火の中全く燃えずに残るその本は、あまりに地味で。

魔術師が研究をしない限りその術は発見されることさえなかったという。



「しかし、明らかに壊そうとする意志下で本は壊されたことはない」


『……っ』


「おそらく今起きているのは、魔法作成師による彼女の呪いだよ」


神からギリリと歯をこすりつける音がする。



「笑えるな。出来レースでお前の思惑通りに女王が立ったのに、お前の管理下のリューズの本で、お前の術は届かないなんて」






……出来レース?



出来レースって何だ?

アタシの頭の中で、ルールと戦った映像が再生される。


出来レースって、何だ?



その仕組まれていたと言わんばかりの言葉は!!


ミアは寝転がったままだ。

聞いているか聞いていないか分からないが、心配そうな王子の表情からはおそらく意識が無いことを伺わせる。



『魔法作成師、ねぇ。それは確かに困ったね』



そして神は否定をしない。




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