女王様御用達。
『彼女の意図は分からないけど、彼女が関わっているとちょっと厄介だなぁ。でも』


神はアタシに向かい手招きをした。


アタシの背後から、ぺたぺたと素足で歩く足音がする。



『自主的なら、その呪いから逃れる事は出来るみたいだね』


銀のぼろぼろのワンピース姿の少女が、アタシの横を駆け抜ける。


「ユリハ!!」


動けないシュシの頭を跨ぎ、神の横に立った。

その表情は無表情だ。

まるで操られているかのように瞬きもせず、アタシ達を眺めていた。



『お帰り、白銀ちゃん』



彼女の柔らかい髪を白い手で撫で、額に唇を当てると彼は満足そうに笑った。


『まあ、ぼちぼち解析するよ。まさか白い本にそんな使い道があるなんて思わなかったけどね~』


と、彼女の手を引く。

その手を、少女の手は叩いた。


『……』


無意識のような反射反応に、神は舌を打つ。


『……今日は本当に、いけない子だ』


強くユリハの顔を叩くと、腕を無理矢理締め上げ捕まえる。


「ユリハ!!」


もがくシュシを彼女の目は見つめていた。

その瞬かない目に涙がたまっていく。


神は空気をこねくり回すように手を空に広げる。



『まったく、帰ったらお仕置きだからね』



来たときと同じ十字の魔法陣だ。


彼女の口が少し動き、その口を読み取る。




オニイチャン。



彼女はその言葉を叫びながらも、神と声とともに魔法陣の中へ吸い込まれていった
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