女王様御用達。

城は半壊。
町に被害甚大。

城で騒ぎを起こした犯人達は捕まらず、証拠もなく。



そして、ミアはしばらく入院が必要になった。

戦闘でだいぶダメージ受けていたし、魔力も使い果たしていて少し危ない状況だったが、持ち直した。

白銀の騎士からの攻撃をもろに受けていたが、アタシに出た後遺症みたいなものは一切でなかった。

……白銀の意志か、単なる分身からの攻撃だったため呪いとして発動しなかったのか。


王子は首に包帯を巻く程度。

アタシも大きなダメージはなく、ポチに至っては無傷。



シュシは行方不明。


ミアとともに病院に担ぎ込まれたけど、治療を受けた途端いなくなった。

それでいてポチに預からせていた眼鏡をきちんと回収するなんて、手際のいいことをしてみせた。


まあ、あいつは相当ヤバイ悪魔と契約しているっぽい。

ちぎれた手を一瞬で再生させるなんて……相当な悪魔だ。

その破壊力といい、禍々しさといい、本当に関わり合いに成らない方がいい人間だったのかもしれない。

奴との関係を調べられたらいろいろめんどくさいことになりそうだ。




「……だけど、礼ぐらいは言わせて欲しかったな……」


ぽつり、自然とそんな言葉がアタシの口から出てきた。

ミアの病室の前で椅子に座り、アタシは報告書を書き、その横でポチは物語を書く。


「……なんですか?」

「なんでもねえよ」

「……」

「……」

「そうっすね」

「おまえな」


ハチのノートは汚い字で埋まっていく。


ハチは2つの物語を書くらしい。


1つは「2つの王冠」の物語。



もう一つは、妹を想い、何百年も旅を続ける悪魔に呪われた医者の話。
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