幕末伝 新撰組日記
「あれ、そう言えば左之君は?」



源さんがお皿を並べながら永倉さんと藤堂さんに聞く



「ああ、原田さんなら、まささんの所ですよ」



「今頃あの薙刀女に斬られてんじゃねえの?」



永倉さんはハハハと笑う

その瞬間、部屋の障子がガラッと開いた



「誰が薙刀女ですって?永倉様?」



永倉さんの顔から血の気が引く

障子を開けたのは、先程話した原田さんの妻、まささんだ



「お早う御座います皆様」



「お早う御座います」



と、俺は一礼した
永倉さんを除いた二人も、同様の事をする


まささんは薄く化粧をした美人で、才色兼備なのだが
なぜかいつも片手に薙刀を持っている


今日の薙刀“も”血塗れである



「まあ斬った事は合ってますけど、薙刀女は……ですよね?」



と、まささんはヒタヒタと、永倉さんの頬に血塗れの薙刀を当てる



「す、すみません」



「すみませんじゃ済ませませんわよ」



そう言うと、まささんは空いている片手で永倉さんの後ろ襟を掴む



「勿論、原田様と同様の事をさせて頂きます」



永倉は悲鳴をあげながら、まささんに連れて行かれてしまった



「……今後もあの人には逆らわない方が良いですね」



俺と源さんは藤堂さんの言葉に激しく同意した
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