陽炎の向こう
安倍邸
「この地図…あってるの?」
先程から同じ所をぐるぐると回っている気がする。
隣で手紙を読む男の着物の袖を引っ張る。
ひそひそと周りの人の声が聞こえてきた。
綺麗、男の方には見えないわ
あのお着物、どこぞの貴族の若様かしら
うっとりと女性達が男を見つめている。女としては気に入らない
当の本人は何も反応せず考え込んでいる
「ん?まぁ待て、焦ることはない。地図ではこっちだのう…」
と言いながら門を曲がると立派な門が見えた。