<季節>サンタクロースの願い事
「とりあえず、待ってみるよ」



シュウジに言って俺は、そのベンチに腰かけた。



そのベンチの硬さ。



色合い。



座り具合。



前にも座った事があったような・・・



「了?大丈夫か?」



シュウジが俺の顔を覗き込む。



「あぁ・・・大丈夫だよ」



俺は、何もすることがなくて鞄から本を取り出す。



それは、自分の部屋にあった一冊の本。



普段は、読まないそのミステリー小説はいつの間にか俺の部屋にあった本。



どうして、その本が俺の部屋にあったかなんて覚えていない。



本当にいつの間にかあったんだ。



俺は、夢中でその本を読みだした。



「あの・・・?」



俺の頭にいきなり綺麗でか細い声が聞こえてきた。



俺は、ゆっくりと顔を本からその声のしたほうに向ける。
< 28 / 107 >

この作品をシェア

pagetop