<季節>サンタクロースの願い事
「シュ・・・シュウジ?」



俺の突然の登場にワンテンポ遅れて彼が答える。



「了?!お前、なんでここにっ」



それからの彼のぎこちない動きは予想以上で・・・



拳で流れていた涙をゴシゴシ拭いて、咳ばらいをして何にも無かったかのように振る舞う。



そんな様子の彼に尋ねる事も出来ず、彼の視線のあったほうにちょろっと視線を向ける。


そこには、綺麗な指輪がディスプレイされていた。



小さな小さな石のついた、その可愛い指輪は



俺の目の前でキラキラ光っていた。



「了?お前、なんでここに・・・あっ奈々子ちゃんかっ?」



俺の視線には気付きもしないで、シュウジが俺の手を引っ張る。



「早く行ってあげな!待ってるんじゃねぇの?」



ハッとして、また足が自然と動く。



「気をつけろよ~!」



シュウジの言葉を背に受けながら俺はまた、走りだす。



頭の中にシュウジの泣き顔がずっと浮かんでいた。
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