キャンティ
ホテルの部屋にはちょっとしたラウンジが付いていて外でも食事ができるようになっていた。


僕らはラウンジの椅子に座り、しばらく日の沈む海を眺めながらおしゃべりをした。


「あの…」


お互いの顔が闇に包まれ始めた頃、僕は思い切って話を切り出した。


「大事な話があるんだ。」


僕が言うと、


「実は私も…」


と彼女が言った。



僕はズボンのポケットから指輪を取り出す準備をしながら、


「お先にどうぞ。」


と彼女の話を促した。


「うん。あのね…」


彼女はワインを一口飲んでゆっくりと究極のひと言を放った。


「私、結婚することになったの。」

< 10 / 61 >

この作品をシェア

pagetop