キャンティ
次の日、僕は彼女の葬式に行った。


霧のかかった生暖かい空気に包まれ、静かに彼女を見送った。


それから僕は、うる覚えの記憶をたどり、喫茶店『キャンティ』へと向かった。



「おや、いらっしゃいませ。」


相変わらず、マスターは優しい笑顔で僕を出迎えてくれた。


「今日はこいつを返しに来ました。」


僕は紙袋からポテチを取り出した。
ポテチはマスターの顔を見るとうれしそうにしっぽを振った。


「不思議なやつですね。こいつ。でも、とても力をもらった。」


「お役に立ててよかった。」


「ありがとう。マスター、僕、がんばります。落ち込んでいる場合じゃない。時間は止まらないんですから。」


僕が言うと、マスターはにっこりと笑った。


「じゃあ」
僕が店を出ようとすると、

「あ、そう言えば…」


とマスターは言った。


「あなたにこの子をお貸しする前に別の女性に貸していましてね…」


「え?」


僕はポテチを見た。


「その女性はこんなことをおっしゃっていました。大好きな人と別れてしまったけれど、私は幸せになってみせます…と。」
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