キャンティ
僕は目を丸くした。


ポテチはしっぽを振っている。


「おまえ…」


僕は微笑んだ。


カラン…


店のドアを開けると、いつの間にか外は霧がはれていて雲の隙間から太陽が見え隠れしていた。


「マスター」


僕は言った。


「僕ね、最後にちゃんと言えたんですよ。彼女に、愛してるよってね。」


夏の終わりの優しい風が僕の横を通り抜けて行った。コーヒーの香りを少々惜しみながら、僕はキャンティを後にした。

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