キャンティ
「この顔を見るとね、子供達が逃げ出すんだよ。はは…当然だよな。不気味だもんな。だから俺は子供が苦手だったんだ…。」


そこまで話すと俺は一気にウィスキーを喉に流し込んだ。


「でも…1人だけ、俺になついてくれた子がいてね。」


「ほう。」


「こんな俺なんかにとても優しくしてくれるんだ。でもその子は…」


カタン。


そこまで話して俺は席を立った。


「まずいな…しゃべりすぎた。帰るよ。」


俺は財布を取り出し、帰ろうとした。
すると、マスターが言った。


「顔はその人の心を映す鏡だと言います。」


「え?」


「その子はあなたの心の中の優しさがちゃんと見えたんですね。」


「…」


俺は言葉が出なかった。


酔ったかな…


目頭が熱くなった。


「やっぱりもう一杯もらおうかな。」


俺はもう1度席に着いた。
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