キャンティ
彼女は大きな個室の病室にいた。


俺がドアを開けるとすかさず反応し、 


「ありがとう。」


と言って笑った。


昔から友達もなく、あまり人と接することのなかった俺には新鮮で優しい笑顔だった。


「今度は落とさないようにするんだよ。」


俺は彼女の小さい手の平にボールを乗せた。
すると、彼女はギュッと俺の手を握り、


「わぁ。おじちゃんの手、大きいねぇ。」


と言った。


その時、


ガタン!


大きな音とともに、病室の扉が開いた。


「ちょ、ちょっと!誰?!あなた!」


見ると、担当の看護士らしき女性が鬼のような顔をして俺をにらんでいた。
普通の人にならこんなには驚かないのだろうが、俺はこの面だ。
仕方ない。


「あ、す、すいません。」


俺は慌てて病室を出ようとした。


すると、


「可奈のお友達だよ!」


と少女が言った。


「あら、そう…。」


看護士はジロジロと俺を見ながら、


「可奈ちゃんは誰とでもすぐにお友達になっちゃうようだけど…何かあったらすぐに私達を呼びなさいね。」


と言って病室を出て行った。
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