キャンティ
「10年…勤めた会社でした。」 


テーブルの上の籠に入った小さなマッチを拝借し、僕はタバコに火を点けた。


後悔はしていないつもりだったが、口に出すとほろ苦い痛みが広がった。



すると


コトン…。
と、突然、小皿に乗った小さなチョコレートが2枚、僕の目の前に出された。


「…これは?」


僕はマスターを見つめた。

すると、マスターは


「当店自慢のビターチョコレートです。おいしいですよ。」


と 静かに言った。
< 3 / 61 >

この作品をシェア

pagetop