キャンティ
彼女の支えになりたい。


次第に俺はそう思うようになっていた。


大切な人がいる。


そのことがこれほどまでに人を強くするものかと関心さえした。


あぁ…そうか。


俺はようやく気がついた。


今まで俺は自分が嫌いだった。


こんな顔で世の中を渡り歩かねばならず、化け物とまで言われ、冗談じゃない。
生きている価値などない。


そう思っていた。


でも違った。


俺は火傷を負ったこの顔が嫌いなのではなく、
火傷のせいにして努力もせず、すべてをあきらめてきた自分が嫌いだったのだ。


それがわかっただけでも俺の人生、無駄ではなかった。


「可奈のおかげだな。」


病院の庭を可奈と散歩しながら、俺は言った。


「ん?」


車椅子に乗った可奈が俺の方を振り返る。


「可奈と会えてよかった。って言ったんだよ。」


俺が言うと、 


「うふふふ。」


と可奈はうれしそうに笑った。


庭の木々たちが色づき、秋の訪れを知らせている。
俺は、気付いていた。
空のゆったりとした雲の流れとともに、幸せな時間も俺の目の前から流れていっていることに…。
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