キャンティ
僕はそのチョコレートをゆっくりと口に運んだ。


その瞬間、


ポロ…


僕の頬を一粒の涙がこぼれ落ちた。 


「あなたにはやるべきことがまだまだたくさんあるようですよ。」


マスターは言った。


僕が店を出るとき、マスターは僕に犬のぬいぐるみのような物を手渡した。


「この子はティッシュボックスのカバーです。」


「はぁ…。」


僕は手渡されたそれをまじまじと眺めた。


黄色い耳としっぽ。真ん丸い目。平べったくてふわふわの白い胴体からは黄色い足が4本ちょこんとついている。お腹はくりぬかれており、そこにボックスティッシュが入れられるようになっていた。


「名前は、ポテチと言います。」


「ぷっ。」


マスターがこれに名前まで付けていることに思わず笑ってしまった。

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