キャンティ
「遊ぼう!おじちゃん。」


可奈が言う。


「おじちゃんは今からお仕事に行かないといけないからまた後でね。」


俺はそう言って可奈の頭を撫でる。


「なんだ。つまんない…。
あ、そうだ!」


可奈は急に大声を出したかと思うと、抱いていたポテチを俺に差し出した。


「おじちゃん、ポテチをパパの所に返してあげて。」


「え?」


俺は突然の可奈の言葉に拍子抜けした。


「可奈ね、ポテチはポテチのパパに会いたいと思うんだ。だからパパの所に返してあげてほしいの。」


「バ。」


可奈の言葉にポテチも驚きを隠せない様子だ。


「…そうか。可奈はポテチがいなくても平気なのか?」


俺は可奈に聞いた。


「うん。平気。可奈には…ママ…がいるから。」





俺は、言葉を失った。


この子はどれだけ自分の人生を覚悟して生きているのか…。


ほとんど見ず知らずの母親をどんな気持ちでママと呼ぶのか。


まだ5才の少女は、世界中の誰よりも気高く、誰よりも強いのではないか。


そんな気さえした。
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