キャンティ
「こんなふられ方ってある〜?!」


私の大声が喫茶店中に響き渡る。
周りにお客さんがいなかったのをいいことに私の怒りはヒートアップしていた。


「おやおや、今日はまた一段と荒れてますね〜。」


「だってこんなの有り得ないよ!」


バンバン!


優しい目をした髭面のマスターの心配顔をよそに、私はテーブルを何度も何度も叩いた。


「あの…壊さないでくださいね。」


「私そんなに怪力じゃないわ!」


「はあ…。」


「でも…確かに、太ったのよね。私。」


私は深呼吸をしてからコーヒーを一口飲んだ。


「これからはコーヒーもブラックね。」


「そんなにお変わりありませんけどねぇ。」


「ダメよ。マスター。」


私は拳をにぎりしめ、宣言をした。


「私、痩せるわ。ダイエットしてきれいになる!」


男にふられてダイエット?


なんてありきたりなシナリオだ。


でもいいか。


1つのきっかけには違いない。

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