キャンティ
「マスター、これから私には塩分控え目でヘルシーな料理をお願いね。」


私が鼻息を荒げて言うと、


「わかりました。でも無理はなさらないでくださいね。」


とマスターは言った。


「はい。了解です!
ところでマスター…」


「はい?」


知らん顔しようと思ったが、どうしても目についてしまうので、私は仕方なく言ってみた。


「さっきからカウンターの奥で動いている物体は何?」


私が言うと、マスターもその物体もハッとしたように動きが止まった。


「あ、ああ。これはティッシュボックスのカバーでポテチって言いまして…」


マスターが抱き上げると、その子がブルブルと震えているのがわかった。


「ふ〜ん。前からいたっけ?なんで震えてるの?これ。」


私がポテチとやらに顔を近付けると、ポテチは私にお尻を向けさらに震えた。


「先程の大声に驚いたのかと…。」


マスターは私と目を合わさずにそう言った。


「あら、やだ。それはごめんなさい。」


私はポテチをそっと撫でた。


「ねぇ。怖がらないでよ。仲良くしよう。」


「バ。」


ポテチが鳴いた。

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