キャンティ
「後1キロ、どうしても後1キロ痩せたいのよ!」


私が熱弁をふるう。


「あんたねぇ。1キロなんて朝と夜だって上下するくらいの微妙な数値よ。難しいわよ。」


「そうそう。いいじゃない。3キロも痩せればたいしたもんよ。」


美香と彩子が口を揃えてそう言う。


でも私はどうしても後1キロ痩せたかった。


理由は…特にない。


後1キロ痩せれば新しい世界が見えてくる。
1キロ痩せれば彼を吹っ切れる。
1キロ痩せれば前に進める。


なぜか、そう思ったのだ。


その1キロ減を目指し、私のダイエットはそれからも半年間続いた。




そんなある日…


ジリリリリリ…


いつものように早い時間に目を覚ます。


しかし…


あれ?


ベットから起き上がろうとする私の体に何か重い物が乗っているような気がした。
…起き上がれない。


私は焦り、力を入れ、思い切りえい!と体を起こした。
その瞬間、
目の前が真っ暗になった。


気が付くと、私はベットの下にいた。
部屋の天井がよく見える。
倒れたのだ。


「いたたたた…」


徐々に体中に痛みが走っていく。
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