イチゴの気持ち ~イチゴ達のラブストーリィ~
「何がおかしいんだよ」
『だって、さっきから…先輩、まじめすぎるし…それに私のこと…』
「なんだよ、言うなよ。笑うなって言っただろ。ほらっ…」
そう言って、コンビニのビニール袋から一本ジュースを出して、私に手渡した。
「のどかわいたからさっ」
ペットボトルのパッケージには炭酸の泡のはじけている絵とソーダ水というレトロ調な文字が描かれていた。
『なつかしぃ。小学校のころはやってたのだ』
「知ってるのか?俺さ、これ好きなんだ」
『確か、イチゴの味もあったんだよね。かわいいイチゴちゃんの絵が描いてあるやつで、すこし甘い微炭酸の…』
なぜだか顔を真っ赤にした先輩が慌てたように話しだした。
「いつもはさ、水泳のことしか考えてないからこう見えても飲むものにも気を使ってんだぜ。でもさ、今日はお前と一緒だから、俺のことも知ってもらおうかなーなんてさ…やべぇ、今日の俺、変…。かせ、空けてやる」
『…でも…今、走って持ってきたばか…り…」
私の手からジュースを奪い取ると、キャップを勢いよくまわした。
シュル シュル と音を立ててジュースがこぼれ出た。
『だから…もぅ…』
二人で顔を見合せて笑った。