イチゴの気持ち ~イチゴ達のラブストーリィ~
「今日はすごい人だぞ。迷子になるなよ」
タカト兄は笑いながら言った。
そして、そっと美咲さんの手を握った。
タカト兄達の後ろ姿を見ながら歩く。
花火の音が聞こえ始める。浜辺に急ぐ人たちの足音の中にタカト兄の下駄の音…
ドーン…パチパチパチ…花火が夜空に上がり吸い込まれるように消えていく…
苦しいな…なんだか苦しい…
お母さん、帯きつく締めすぎ…下駄も新しいせいで鼻緒のとこ痛いよ…
夜店がたくさんある海通りに出た時だった。
『タカト兄、私友達と約束あるから…』
「…麻衣…まい…」
タカト兄の声を振り切るように、人ごみの中へ入っていった。