少年殺人鬼(6p短編)
 彼女、由加とは、大学の新歓コンパで出会った。
 田舎から上京してきたばかりだと言うだけあって、とても純粋で、いかにも騙されやすそうな女の子。
 青臭い言葉で誘えば真っ赤になって俯いて、すぐに関係を持つことができた。




「知明、また携帯鳴ってる」

「あー、うっぜぇ」


 最初こそその素朴さが気に入り構っていたが、物珍しかっただけ。
 すぐに飽きて離れようとした。
 でも由加は、それを受け入れなかった。

 マナーモードにしても煩く振動する携帯が、記憶の中の声と被る。


『知明くん』


 無知で、素直で、分からない事があれば真っ先に俺に聞きに来る。
 子犬のようになついてくる彼女を、可愛いと思った。
 だがそれも直ぐに、「鬱陶しい」に変わっていた。

 テーブルの上でカタカタ震える携帯の電源を切る。
 と同時に、後ろから体を密着させてきた女が、俺の手からそれを取り上げた。


「ひどいんだ、あんな純粋そうな子弄んで」


 言葉と表情が噛み合っていない。
 肩口に唇を寄せ、悪戯っぽく笑う。


「じゃあ今から帰る? 終電ないけど」

「意地悪」


 のこのこ男の部屋に上がり込んでおいて、よく言う。

 でも俺はやっぱり、こういう女の方が好きだ。
 由加と違い、次にどうでるか分からないのが楽しい。
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