少年殺人鬼(6p短編)
 姿は見えるが声は聞こえない、触れられない。
 笑い続ける友人を見て、由加が肩を落とす。

 生前の……、付き合っていた頃の彼女そのままだった。
 いや、あの頃は恥ずかしがって会話もまともに続かなかったから、今はもっと近い。
 近いのに……もうどうする事もできない。


 遅すぎた罪悪感が、やっと、俺にのし掛かる。

 彼女に償いたい、何かしてやりたいのに。
 自分の無力さに憤り物に当たると、彼女は少し離れた所から、悲しそうにこちらを見詰める。
 やめてくれ、いっそ責めて罵ってくれたら良かった。

 残酷な程優しい由加。

 いつしか彼女の事が頭から離れず、大学も休みがちになり、手首には無数の躊躇い傷。
 由加と話したい、触れたい、同じ所へ行きたい。

 根性なしな俺が中途半端に自分を傷付ける度、泣き出しそうな彼女と視線がぶつかる。
 お前のその優しさに、もっと早く気付いてやれていたら。
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