第六感ヘルツ

15,15歳の国




僕は15歳。
今日はケンくんが16歳になる誕生日。


「おめでとう」
「おめでとう」


教室中がケンくんの誕生日に沸く。
本当におめでとうでいいのだろうか。
僅かな疑問は残るものの、僕は何も言わずに、只ケンくんを遠巻きに眺めた。


「16歳、おめでとうケンくん」


代表の女の子が花束を渡す。
ケンくんは、顔面蒼白だった。 受け取りたくないのだろう。
ケンくんは花束を凝視して固まったまま。


「ほら、早く受け取って」


急かす様に女の子がぎゅうぎゅうと花束を押し付けた。
無理矢理受け取らせると、足早に女の子はケンくんから離れる。


「おめでとう、おめでとう」


あっという間に取り囲まれて、悲鳴と共にケンくんは血まみれで倒れた。


「おめでとうケンくん、おめでとう」


口々にそう言いながら、皆が倒れたケンくんを貪り始める。


「ほらお前も、早くケンくん祝ってやれよ」


立ち尽くす僕に、クラスメイトが口元を真っ赤にして満面の笑みでそう言った。


「……うん。ケンくん、おめでとう」


ぐしゃぐしゃになった花束を拾って、目を細めてそれを見詰めた。
綺麗に包装された菊の花束。

ここは15歳の国。
16歳になれば、めでたく食料となる国。



15,15歳の国【エンド】
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