第六感ヘルツ
17,何も救われませんでした。
空飛ぶ円盤を眺めて、おかあさんはこう言った。
「迎えに来たんだわ」
そんな訳あるか、向こうはきっと、おかあさんを知りもしない。
大丈夫かと視線を投げたなら、ふらふらと吸い寄せられていくすっかり痩せた背中が見えた。
「おかあさ、」
「迎えに、迎えに来たんだわ」
わたしの言葉をさえぎって、おかあさんは円盤に吸い込まれていった。
そうして円盤はやっぱり空を飛び去って、おかあさんは、まだ帰って来ていない。
17,何も救われませんでした。
【エンド】