第六感ヘルツ
18,遠足
息子の遠足が明日に迫っていた。
初めての遠足に、息子の心は踊っているようだ。
うきうきしながら、あれやこれやとリュックサックに楽しそうに詰めていた。
「そんなに持っていくの?」
「だって、何があるかわからないじゃない」
「まあそうね」
こんなご時世だ、確かに、何があるかはわからない。
息子の言葉に最もだと頷いていたなら、うきうきし過ぎた息子から、たたたっと一番大切なものが先走りした。
「あらあら大変」
走りだしたそれをぱっと捕まえて、たしなめながら振り向いた。
「また足が遠くに行っちゃうところだったわよ」
「あはは、遠足だからね」
代わりの足も持っていかなきゃね、と、ぱんぱんになったリュックサックを眺めて、二人でまた笑った。
18,遠足【エンド】