第六感ヘルツ
20,平凡な主婦の独り言
カタカタとキーボードを鳴らしながら、チカチカと小刻みに点滅を繰り返す文字を羅列させていく。
「詰まらないなあ」
そうは零しつつも、羅列し文章となっていく内容は、平凡な愚痴とは程遠いような内容。
毎日が平坦で、平穏で、平凡だ。
旦那がいて、子供がいて、休みの日は姑に会いに行って、たわいない会話に見せかけた牽制をかけて。
ときどきは家族で出かけたり、スーパー前で井戸端会議をしてみたり。
そんな毎日が日常であり、わたしの生きている世界だ。
「詰まらないよね」
尚もキーボードを叩く。
脳内で繰り広げられている二次元世界は非日常で、もうすぐクライマックス。
殺人鬼が平凡な街を歩き、もうすぐ新たなターゲットである平凡な主婦の家にたどり着くところ。
後、数秒。
きっと彼は、インターホンを何事もない風を装って押すだろう。
「……ラスト、どうしようかな」
主婦は攻防の末、いつもの日常を取り戻すだろうか。
殺すか殺されるか。
その結末に、自分で造り上げたものながら頭を悩ませたとき。
ピンポーン。
「誰だろう」
パソコン画面はそのままに、わたしは玄関へと向かった。
20,平凡な主婦の独り言
【エンド】