第六感ヘルツ
23,タフィーの行方
タフィーの行方を誰も知らない。
「最近、タフィーを見ないよね」
ふと、誰かが口にした。
「タフィー?」
「そういえば」
誰かがそう返せば、また誰かが同意する。
「どうしたのかね」
「あら、マイケルも知らないの?」
マイケルはタフィーの恋人で、周知の間柄だった。
そのマイケルでさえ知らないらしいタフィーの行方に、話を出したマリアも首を傾げる。
「どうしたのかしら。タフィーってばおっちょこちょいだから、うっかり川にでも落ちてなければいいけど」
心配そうにすぐ傍を流れる川に目を遣るマリアに、マイケルは軽く笑った。
「まさか、違うよ。まあ、おっちょこちょいだからこそ、騙されてどこかに監禁でもされてるのかもな」
「あら、それこそ笑い事じゃないわ」
恋人である筈のマイケルの言い草に、マリアは少し憤慨して言い返す。
「まあ、大丈夫さ。タフィーにだって理由があるんだろ」
「そうかもしれないけど」
誰よりもタフィーを知るだろうマイケルの言葉に、マリアは渋々と同意した。
「ただいま」
普段と変わらない明るい声で、マイケルは帰宅した。
よしよしとベッドの上のペットを撫でて、上着をハンガーに掛ける。
「タフィーが見つからないってさ」
猿轡をくわえたペットを一瞥して、マイケルは、小さく笑った。
タフィーの行方を誰も知らない。
23,タフィーの行方【エンド】