第六感ヘルツ

29,可愛いおねだり




「食べたいよう」
「まだ駄目でしょう」


赤ん坊を抱いた母親がそう言って息子であろうもう一人の男の子を諌めていた。
微笑ましいなあ。
そんなことを考えながら、日曜昼下がりの公園のベンチに腰掛ける。


「でも……食べたいな」


まだ食い下がっている様で、母乳を飲む弟をじっと見詰める男の子。


「……まだよ」


愛しそうに赤ん坊をそっと撫でて、母親はこう続けた。


「もっと大きくなったら、美味しいハンバーグにでもなるんだから」


日曜の昼下がりの公園。
日常であった筈の、異常な一幕。

おねだりじゃ済まされない。



29,可愛いおねだり【エンド】
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