第六感ヘルツ
30,壊滅的彼女
僕の彼女は変わっている、いや、終わっていると言った方が正しいかもしれない。
「あーん、また出ちゃったー」
ぐつぐつとカレーを煮込んでいれば、いかにも女の子よろしい声が聞こえてきた。
が、相手にはしない、いつものことだ。
「あ、こっちははみ出してるー。もーやんなっちゃう」
やんなっちゃうのは僕の科白だよと心中密かに呟いてから、溜め息混じりにコンロを弱火にした。
充満するカレーの匂いと、女の子特有の香水の匂い。
香水はすきじゃない、が、つけてもらわなければそれこそ困るので、今はもう、何も言うことはなかった。
「ちょっとー彼女が困ってるのに、何か言うことないわけ」
「言っていいの?」
「何よ、言ってみなさいよ」
無理矢理グロスを塗りたくっただろう唇とも言えないそれを尖らせて、可愛い子ぶってぶすける終わっている彼女に、思い切って言ってみた。
「いい加減、死んでよ」
飛び出た眼球、はみ出した腸、腐った匂いに上乗せされた香水の匂いに、僕はもう、限界だ。
(カレーの匂いでも、誤魔化しきれないなんて)
30,壊滅的彼女【エンド】